静岡県・掛川駅から車で20分。日本酒好きなら誰でもその名を知る『開運』の酒蔵・土井酒造場がそこ にあります。酒造りは寒冷であればあるほど適すると言われています。南に位 置する静岡は一年を通してぽかぽかとあたたかいため、ここの酒は長い間、陽の目を見れませんでした。
ところが、昭和54年の全国新酒鑑評会で『開運』が金賞を受賞してから、風向きが変わり、「静岡の酒はうまい」と認められるようになりました。
 
土井酒造場の杜氏の名は波瀬正吉。杜氏の9大流派のひとつ能登流杜氏であり、その中でも能登四天王と呼ばれる名人のひとりです。
波瀬氏が酒の道に入ったのは昭和25年、18歳の秋、義理の兄に「一番厳しい杜氏の下で働け」と言われ、静岡の蔵で9年、酒造りの基本を身につけました。その後、輪島の蔵の頭を勤めていたところ、土井酒造場4代目当主・土井清氏が波瀬氏の技量 にひかれ、『神様』と謳われる杜氏波瀬正吉の誕生となりました。
 
波瀬氏が『杜氏の神様』と呼ばれているには、理由があります。全国新酒鑑評会での金賞を次々と受賞し、能登杜氏醸清酒品評会での22年連続受賞……。
波瀬氏の酒造りの技に絶対の信頼を持つ土井氏。今でこそ、杜氏の名前がついた酒もよく目にしますが、土井酒造場から発売された大吟醸『波瀬正吉』がその先駆けでした。波瀬氏の名を冠した酒を発売したのも、その信頼の表れだということがうかがえます。
 
 
土井酒蔵場から南に2kmほど離れたところにある、国の史跡に指定されている高天神城址。ここに『長命水』と呼ばれるなんとも不思議な湧き水があります。
日本全国の水は中硬水がほとんどで、当然多くの日本酒がこの中硬水つくられています。
水は麹と酵母を醗酵させる役割を担っていて、通常、軟水は醗酵が弱いと言われています。
しかし、この『長命水』は軟水でありながらよく醗酵します。しかも濾過する必要が一切なく、醗酵補助剤や活性炭など加工をせずに、軟水の特長であるやわらかな口当たりのまま、日本酒をつくることができます。
 
酒造好適米の代表格『山田錦』。栽培にたいへん手間のかかるこの酒米の王様は兵庫県で作られたものがよく知られていますが、ここ静岡県でも若者がこつこつと作っている『山田錦』があります。
土井氏、波瀬氏はこの地元産の『山田錦』に着目しました。「この米でいい酒がつくれそうだ。」
 
波瀬氏の名がついているのは、酒だけではない。麹を加えた米を醗酵させる役割の酵母に、波瀬のHと土井のDから名づけられた『静岡酵母HD-1』があります。この静岡を代表する酵母のひとつでもある『HD-1』でつくった酒は、吟醸の香りが華やかで、やや酸味があります。
   
『舞踏家』田中氏 お客様の声
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